オーイ

アイヌ語で「オーイ」とは、
悪霊を脅す言葉で、男性のみによって使われるのだとか。


それが、現在、日本の俗習で、妻を呼ぶ言葉となっている。


その背景を考えて猿の群などに想像を巡らせると、
外敵とまず出会うのは監視員であるオスであって、警戒音を立てる。
それを聞いたメスは、危険を察知して群として集合する。強い者の
元に集まる。


その集団の最小単位である夫婦では、危機を察知するのは夫であり、
外敵を威圧するのも夫であり、その声を聞いた妻は、夫の影に隠れる。
つまり、夫の元に寄り添う。


「オーイ」という威圧語は、同時に妻を呼び寄せる言葉でもあった。


社会が成熟し、街が深くなれば、得体の知れぬ外敵に不意に曝される
事が無くなる。そんな平和が担保されるようになったから、威圧の意味が
失われ、妻を呼び寄せる意味だけが残った。…のではなかろうか。